ポリエステル媒地とは?

ポリエステル繊維媒地は従来の土壌の代わりに植え付けの材料として使用する培地です。リサイクル資源のポリエステル繊維を主体に、用途に応じて保肥性を高める人工ゼオライト等を特殊配合した人工培地で、排水性、保水性、通気性、肥料の保持力などに優れ、根張りもよく植物が育ちやすい特徴があります。さらに土壌害虫の発生や、連作による媒地の経年劣化に伴う連作障害も抑えることができ、水で洗い流せば連続して10年使用することが可能です。また、ポリエステル媒地は管理が簡単で従来のように土壌の状態に左右されない為、経験に依存する要素がなく、マニュアル的に運営をすることができます。加えて物理性も安定しており耕運も不要になることから大幅な省力化も実現でき、これまで3K「きつい、汚い、危険」と言われた農業を「快適、キレイ、健康」の3Kに転換できる可能性を秘めています。

ポリエステル媒地の特徴

1. 余分な水分はカット

繊維と繊維の間にできる隙間が排水性と保水性を高めます。また、植物に必要な水分量を確保し、余剰な分は流れていくので根腐れの心配がほとんどありません。

2. 培地を使い続けて10年。

土壌では、同じ場所で栽培し続けると連作障害が起こります。連作障害が起こると収量の低下につながります。繊維媒地は、水で洗い流せば初期の状態に戻るので連作障害の影響がほとんどありません。10年同じ培地を使い続けている長野県の農家様(施設栽培)もいます。

3. 土の約1/10の重さ?

ポリエステル繊維媒地の主な材料はポリエステル繊維です。よって、土壌に比べて軽量。高設ベンチなどの培地として最適です。屋上・ベランダなどで野菜栽培する際に、土の汚れや重さをあまり気にせず使用可能です。

4. 土壌に負けない絡み具合

繊維と繊維の間と細根の太さがほど同じなので、繊維と根が絡みやすいのが特徴です。細かい根がたくさんできることによって表面積が大きくなり、養水分を吸収しやすくなります。

5. 水耕栽培では難しい根菜類も・・・

ポリエステル繊維媒地はあくまで作物を育てる“足場”です。水耕栽培では難しい根菜類、コカブや自然薯などの栽培が可能です。

6.土と何が違う?

1番の違いは連作が可能という点。加えて、リサイクル繊維培地は土壌害虫が出にくいのも特徴。


破棄されるはずであった作業服がポリエステル媒地として利用され、アンスリウムを育て復興のシンボルとなるだけでなく、CO2削減など、人にも地球にも優しく、地球温暖ガス削減にも貢献しているということになります。

そしてこの今回のプロジェクトはSDGs※のゴール、

No.7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに

No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう

No.12 つかう責任つくる責任

No.13 気候変動に具体的な対策を

No.17 パートナーシップで目標を達成しよう

に沿っています。

利益のことだけを考えるのではなく、SDGs農業という新しい時代になっているのだということがわかります。


※SDGs:「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2015年9月に国連で開かれたサミットにて定められた、現代社会における様々な社会問題を解決するための国際社会共通の目標のこと。

ポリエステル媒地とL.W.W

私たちL.W.Wは近畿大学の社会連携推進センターに属して活動しています。この社会連携推進センターの担当の田中尚道教授が研究されているポリエステル媒地に賛同した学生3名がこの団体を設立しました。つまり、私たちの原点となったのがこのポリエステル媒地なのです。

L.W.Wとは?

日常着ている服。その裏側の真実を伝える。それが私たち L.W.W にできること。

L.W.WはLive with Wearの略称で、服と生きるという意味が込められています。

友人と出かけるときの服、デートの時の服、パーティーの時の服。様々なシーンで使い分け、私たちの気分を大きく変えることのできる服。私たちはいつだって衣類といます。しかし、多くの人はそんな身近である服が、いつ、誰に、どこで、何を用いて、とのように、作られているのかあまり詳しく知りません。実は、服作りの過程では様々な問題があるのです。環境破壊、人権侵害、児童労働、水質汚染、農薬による人的被害、動物虐待、水資源の枯渇など挙げればキリがありません。

これらの問題は、私たちでは解決することは不可能です。

でも私たちにできること、それは「伝えること」。それは微力で小さな事かもしれません。

しかし、服の真実を知ることで、服との向き合い方は大きく変わります。あなたの目の前にある服は、色々なバックグラウンドを持っています。悲しい事実を持った服ももちろんたくさんあります。私たちはその真実を伝え、そんな服と私たちがどう生きていくのか問い正していきます。


ポリエステル媒地が作られる工程

1. 様々な素材の古着や廃材からポリエステル素材を選別・分別した後、素材を細かく破砕し繊維を開繊して綿の状態(反毛繊維)にします。


2. その反毛繊維をフェルトとしてシート状に加工します。


3. その全てのフェルトシートがポリエステル媒地になるのではなく、様々な製品に使われるフェルトの素材として加工された際に出る、廃棄されてしまうはずだった端切れを粉砕しポリエステル媒地として利用します。


4, シートの端切れを細かくチップ状に粉砕カットし、ブレンド副資材として、木炭、Fe型 人工ゼオライト、真珠岩パーライト、黒曜石パーライトを加えてブレンド加工して、ようやくポリエステル媒地になります。


こちらが完成したポリエステル媒地です。

服1kgを焼却した場合3.14kgの地球温暖化の一因とされる炭酸ガス(CO2)が発生しますが、ポリエステル媒地としてリサイクルすることで炭酸ガスの排出を減らすことが出来ます!


L.W.Wのメンバーが集まり、授業の合間や休み時間を利用して約3ヶ月がかりで新日本空調株式会社の旧作業服1,200着の解体作業を行いました。全てのボタンやファスナーを外し、原料となる古着の不純物を除去し、ポリエステル資源にリサイクルできる状態にしました。

今回は、廃棄されるはずだった作業服をリサイクルすることで、ポリエステル媒地として利用しましたが、もし作業服1200着を焼却した場合、1kgあたり3.14kgの地球温暖化の一因とされる炭酸ガス(CO2)が発生するので、作業服をポリエステル媒地として再利用せずに作業服1200着を焼却した場合

作業服1200kg × 発生する炭酸ガス3.14kg = 3,768kg

つまり今回のリサイクルで3,768kgの炭酸ガスの排出が削減されました。

服を焼却するとたくさんの炭酸ガスが出てしまいますが、ポリエステル媒地で利用できるようにリサイクルすることで炭酸ガスの排出を減らせるのです!

3,786kgの炭酸ガスは、液化天然ガス(LNG)132t を燃やした時に排出される炭酸ガスと同量であるため

液化天然ガス(LNG)132t を燃やした時に排出される二酸化炭素の発生量を削減できたことになります。


使い終わったポリエステル媒地の行方

連続して10年使用することが可能なポリエステル媒地ですが、使用後にそのまま廃棄してしまうと、結局それが「プラスチック廃棄物」となってしまいます。

そこで、「使用済のポリエステル媒地を廃棄物固形燃料にする」という更なる再利用案を考えました。

衣服リサイクルから生まれたポリエステル媒地を、枯渇が心配される化石燃料の代替にすることができれば、廃棄物リサイクルによってCO2排出量を削減するだけでなく、SDGsの目標No.7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」という目標に大きく貢献できるものになります。

ポリエステル媒地を廃棄物固形燃料に!


廃棄物処理やリサイクルなどを行うニセコ環境株式会社にご協力いただき、北海道、琴平にあるリサイクルセンターで、ポリエステル媒地を廃棄物固形燃料にする実験を行いました。

ニセコ環境が運営するニセコファームのトマト栽培で6年間使用されたポリエステル媒地を固形燃料にする実験を行いました。

固形燃料を制作するには、水分が10%以下でないといけないのですが、トマト栽培で使用されたポリエステル媒地は30%ほどの水分が含まれていたことがわかりました。

そこで、琴平リサイクルセンターに保管されているプラスチックと紙の廃棄物を「3:7」の割合(全体の水分が約15%ほどになったという仮定)で混ぜて再挑戦しました。

この実験では、ポリエステル媒地にプラスチックと紙の廃棄物を追加することで固形燃料にすることができましたが、本来の目標は「ポリエステル媒地のみで固形燃料を作る」ということであった為、後日再チャレンジすることになりました。

今度は兵庫県西宮市に本社を置く極東開発工業株式会社にご協力いただき、同社の「突き押し式成形機」で実験しました。結果、ポリエステル媒地100%で固形燃料を作ることに成功しました!
極東開発工業株式会社では、近畿大学内の原子力研究所内で栽培した自然薯やアスパラガス、ヤマトイモに使用されたポリエステル媒地をビニールハウスの温室で水分が10%以下になるまで乾燥させました。
使用済ポリエステル媒地100%でできた新しい廃棄物固形燃料、名付けて「HFPF(High Calories Final Polyester Fuel)」です。
熱量※を分析したところ、約6700kcal/kg。
※熱量:一定単位量の燃料が、完全に燃焼することによって発生するエネルギー。
この「HFPF」も、「バイオコークス」同様、石炭コークス(約6000~7000kcal/kg)に近い熱量だということがわかりました。
毎年約200万トン廃棄されているポリエステル製品から燃料を作ることができたら、海外から輸入している石炭の量を減少することができると考えています。

ポリエステル媒地が活用された例

近畿大学は、「“オール近大”川俣町復興支援プロジェクト」の一環として、平成 25 年(2013年)に福島県川俣町内にビニールハウスを設置し、農業の復興と振興を目的とした研究・提案を行ってきました。

その中で、野菜や観賞用植物栽培にポリエステル媒地を使うことが、高品質な作物の生産と風評被害の払拭につながることを確認しました。特にアンスリウムについては、国内産の流通が少なく年間を通して頻繁に出荷できる点で、原発事故の影響を受けた川俣町の農業振興策に有望であると考え、試験栽培を続けてきました。

このアンスリウムは、近畿大学と新日本空調株式会社(以下「新日本空調」)が共同で研究開発している「二酸化炭素(CO2)施肥制御技術」により栽培されたもので、このポリエステル媒地は、2019年11月より新日本空調の旧作業服から作られたものを使用しています。

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